戸田山和久『「科学的思考」のレッスン』、NHK出版(NHK出版新書)、2011。
「科学的思考」のレッスン 学校では教えてくれないサイエンス (NHK出版新書)
第一部が科学哲学の上澄みのまとめ、第二部はクリティカルシンキングの話だと思う。上澄みといったけど科学哲学という哲学の一分野として見たときにスケールとして上澄みになるという話で、ひじょうに実用的な知識がまとまってると思う。哲学の成果がこうも一般の人にも使える、役立つ、意義あるものとして提供されることからは、科学哲学という分野の成熟を感じる。いや、学問分野としてというより、科学哲学の成果の日本での紹介が進んで、ここまで洗練された入門書(まあ哲学の入門書ではないですが)が書かれたことに、時代の進展を感じる。これに比べると認識論とか、「世界は私の表象である」「すべての認識は主観的である」みたいな俗説(……)の膾炙しかもたらしてないように見えますが。いやそれは認識論のせいというか哲学の入門書がこぞってそういう問題設定を提示するからなのでしょうけど。そして気になるのは美学だ。これの美学バージョンが書かれることを僕は期待している。だけどまあ、しばらくかかるでしょうね。美学という分野の成熟具合もよく知らないし、分析系の美学の紹介もようやくはじまったところだし。