夜その1

爪を切る快楽とか、耳を掻く快楽とか、ささくれを剥がす快楽とか、そうした手軽な快楽で生活を満たしていてはいけないと感じる。端的に言えばおれは読書すべき。
わからない。人生には読書より大事なことがあろう。まあ、というよりかは、人生は読書だけで成り立ってるわけではなかろうし、暇のつぶし方は読書より他にもあろう。(余談だが、人生というスケールでものを把握するのは、どこか有害だという予感がする。人生というスケールは自明な領域ではない。) ただ、今の自分にとって読書は第一に「すべきこと」であるし、また今は有益に本を読むことのできる状態にありもする、と思う。爪を切るのを忘れて読書に没頭するのがよい。哲学のことを考えて耳を掻く暇を与えないのがよい。
「そうした手軽な快楽で生活を満たしていてはいけない」のではない。「そうした手軽な快楽」は、バッテンをつけて否定さるべき対象ではない。それらはある生活スタイルをとったときに、結果として除かれる。意識の外に姿を消す。