今日の成果

桶の中に
山びこ一つ
改選された湿度の裏に
とけ始めの木こりの影が
せわしく距離をつめて
置き場のない感情の尻ぬぐいをしている


読み切れない音
潮騒
山吹色した海綿体が目の前に立ちはだかり
扇形に切り取られた視界を照らしている
霊魂のおさがり。


冥界によろしく、と言って
消えたぼくの
目の玉の眠る
山の中に
余ったせんべい二枚
波打ちぎわに浮かべて
ふやけるのを見てた
予想の範囲内。


こぼれ落ちる速度で何ができる?
何ができた?
目覚めはむしろ良く
耐性の向こうに鬼の顔
四つ葉の頽落


煙突の向こうに隠れているもの
先細りの快楽
よばれないときにくる
峠の錯乱
唖になったコーヒー
機種変更の呪縛へ
なだれ込んでゆく
とんかつソースの味
etablieren
会話は続く
絶え間ない
媚びの表情
連続性の大地のうえに
旅行く影は魚のうろこ
沖合に野蛮
とろに鮭
健康の内側にうごめく
喧嘩っ早い臓器どもよ
レクチャー済みだ しばらくは
エストニア オリビア
ラグランジアン
吐き出せ 満たされるまで
暗闇の欲だ
よせばいいのにの匂いだ
胃の中に入ったものは一生出てこない
ならば いっそ。


とび職の気持を味わったことがあるか
地中から這い出てきたツバメのように
湿気のある五月の道を
通ったことがあるか


かつて底なしだったバナナの皮
いまでは線香の匂いが鼻にしみる
取り替えても もう 今は
自転車にも乗れるから。
背丈二メートルほどもある
草を分け入って
やさしい目をしてる
ワニのような口をしてる
演じきれない午後
くつろいで痛がってる
ところてんみたいに
スリの気持がわかる
鮫の興味の先端で
ヨブ記を開いた


逆再生のめだかの群れ
逃走する中で
ひろった言葉に I love you
味噌の味のする毎日を生きていた
あなたに幸ありますように!
連濁の果てに見落した
もう一つの世界へ。