即反応即返答

即答ができない。じゅうぶん即答しうる問いに対しても――たとえば極端なのだと、「血液型は?」みたいのにも――即答することがない。答えるまえに一拍おいてしまう。手に持っているのに、わざわざ答えを探すふりをしてしまう。自分がいま言おうとしていることが正しいのかどうか、確かめている。だがその実確かめるべきことなどなくて、だってそうだ俺の血液型が O 型であるということは考慮の余地なき事実なんでありいやもしかしたら間違ってるかもしれんが間違ってたところで大して困ることはないしそれが間違ってるかどうかはしょせん俺の一考の動かしうるところではない、それゆえそれは「考えても仕方のないこと」であるから即答してよい質問なのに、しない。
なるべく正しいこと、確かなことを言いたい。精確な表現で、言いたい(ここで「言いたい」の代わりに「伝えたい」が出てこなかったことに根本的な錯誤を見ることもできるだろう)。自分が思ってることにぴったりくることばを見つけるまで口を開かない。間違ったことを伝えたくない。結果俺は口数の少ない男である。いや、原因はそれだけではないけど。
慎重すぎる。何に真摯であろうとするあまりかといえば、まあそもそも真摯かどうかという点に関しても NNN なのだが、仮に真摯という言葉を使うならば、自分になのである。あります。他者にではないのである。いや、すこし弁明するならば、みずからの出す表現にこだわるということは、何が相手に伝わるか、ということに関しても確かに、間接的にではあれこだわってはいる。これは自分がよく見られたいという動機によるのではないことはほぼ断言できる。いや、なるべく「素の」自分のままでよく見られたいと思っている、というべきか。
しかしもっとおおざっぱに、おおづかみに話してみてはどうか。ひとつひとつのことばを磨くだけが話を精確にする方法ではない。話の進んでいくなかで、彫刻を削り出すように輪郭をきめ細かくしていく、そういう方法もある。もとよりそれも容易な道ではない。そもそも同じ話がじゅうぶんな発言数続くということが僕の前ではあまり起こらない気がする。俺の話したいことを聞いてくれる人もあまりいない気がする。書くと言うのもアリだがな。ていうかそういうのが目的なんだったっけ?